伊豆のモロコ(クエ)釣り 磯釣りNOW (底物編)

 
クエを食べたことのある人に感想を聞いてみると皆が皆、大変美味しいという。私もずっと食べてみたいと思っていたのだが一般には売っているのを見たことがなかったので食べることができなかった。しょうがないので自力で釣って食べてみようかと考えていたがあまりにも非現実的な釣りだと思っていた。

 とりあえずクエ竿を一本手に入れていたある日、釣り仲間からクエ釣りに行こうという誘いがあった。まだリールは手に入れていないと伝えると貸してあげるということだった。いつも通っている釣具店の店員に仕掛けを1つ作ってもらい、それをみようみまねで5,6個の仕掛けを作っておいた。

 雰囲気を味わうだけでもやってみようと考え、「本格的にやっている人に見られたら笑われるだろうな」と思いつつ、適当に竿掛けと仕掛けなどの道具をかき集めて南伊豆に行った。

 途中、真鶴のあおき釣具店で付け餌用のサバと撒き餌用のイワシを買った。サバもイワシも一ブロック15kgで3人分でサバを2ブロック、イワシを2ブロック買ったのでトータルで60kgの餌であった。規模が違う...3人分で値段は7千円ちょっとなので石鯛釣りより安くつくなと感じた。


 下田沖根に渡船しているときはいつも利用させてもらっているひがし丸にクエが釣れそうなところに乗せてよと頼んで船に乗り込んだ。すると裏荒神に向かっていた。そこは地磯で歩いて来たことも何度かあったのでわざわざ渡船で乗る気にはなれず私が一度も乗ったことのない大根でやってみたかったので「大根にしてくれ」と頼んで大根に変更してもらった(後でこの変更が吉とでるとは予想もせず)。

 大根に着くと離れには別の渡船で乗った石鯛師が竿を出していたが、ひがし丸で降りるのは私達だけであった。離れ側から仲間が竿を出していき、私は一番左側で竿を出すことにした。初めての作業なので要領も分からず、アンカーボルト用の穴をジャンピングで開け竿掛けを固定して、仕掛けを準備するまでにかなりの時間がかかってしまった(石鯛竿も一本出した)。

 普通、クエ釣りは足元からドン深のポイントが理想的だが、大根は足元からだらだら深くなっていく場所なので少し投げなければならない。石鯛竿を振る感覚で仕掛けを投げてみるが、クエ竿に60号の道糸を巻いた重いリール、60号の錘に40cm近いサバの餌を付けての遠投はめちゃくちゃキツイ!精一杯投げても30mいくかいかないか程度である。一投するごとにかなりの体力を消耗してしまう。

 それに仕掛けを投げると直ぐにウツボの当たりがグワングワンし始める。少しして上げるとウツボが仕掛けに絡んでグチャグチャである。「あーっこの仕掛け一本いくらすると思っているんだ!(クエ釣りは仕掛けもかなり高価である。)」とショックを受けながら新しい仕掛けに替えて投げなおす。するとまた直ぐにウツボが当たり始める。上げようとすると今度は根掛かりである。竿を色んな方向にあおっても全然外れない。道糸を掴んで引っ張ってみても外れない。石鯛の根掛かり切りの要領でワッパに道糸を巻いて引っ張ってみるが切れないどころか伸びと反発で海に引きずり込まれそうになる。仕方なくタイムカッターを使って切った。

 こういう作業を繰り返しているのと石鯛竿も一本出しているのでへとへとになってしまう。足腰、背筋や腕、背骨は悲鳴を上げているようで翌日の筋肉痛がどの程度か考えただけでも恐ろしい。そうこうしているうちにお昼になってしまった。「ああ撤収まであと一時間か...少し後片付けもしておくか」と考えていた。それまで左に流れていた潮がゆっくりと右に流れ出した。

 磯の後ろ側で後片付けをしていてふとクエ竿を見てみると今までウツボがつついていたのとは違って大きく曲がっていた。仲間に「入った。入った」と叫んで竿に駆け寄った。仲間が朝一にサメが泳いでいるのを見ていたのでてっきりサメが掛かっているものだと思いながらゆっくりとリールを巻いた。竿は磯に固定してあるので重量感は分からなかったがかなり竿は曲がっている。リールを巻いているとき途中どこかに引っ掛かったのか2,3度重くなって巻けなくなったが緩めるとまた巻けるようになった。

 だんだんと魚が浮いてくるのが分かった。かなり浮いたところで魚が右にゆっくり泳ぎ出した。「どれくらいのサイズのサメかな?早く姿を見せてくれ」と思いながらリールを巻いていると、予想に反して写真でしか見たこと無かったクエが水面に浮いてきた。

 信じられないといった感じで「マジかよ!モロコだっ!」と叫んだ。それまでは余裕でリールを巻いていたのだが、慌てて竿を持とうとして竿尻ピトンが抜けへッピリ腰になってしまった。「ギャフ!ギャフ!」と仲間にお願いして糸を緩めないように魚を水面に浮かした。2二人の仲間がそれぞれ1本ずつギャフを引っ掛けようとしてくれているがなかなか掛からない。

 仲間がギャフを引っ掛け損なうのを見るたび、私は余裕があるように振舞って笑っていたが内心は「早く掛けてくれ!」と願っていた。そのうち仲間の一人が口の中に引っ掛けるのに成功して磯の上に引き上げてくれた。

 磯に引き上げた時はかなり小型だと思ったが意外にも106cm、17kgあった。帰りの船に乗るときはもうかなり誇らしげであった。港で棺おけのような発砲箱を購入(\2,000ほど)してワンボックスカーの3列シートの2列目を占領して持ち帰った。翌日、仲間の家の駐車場で魚拓を撮って魚を捌いて皆で切り身を分けて持ち帰った。自宅で刺身、焼き、鍋にして食べたがどれもとても美味しく、中でも鍋が非常に美味しかった。

 こうやって最初の釣りでビギナーズラックを得た私は調子に乗って魚の味も忘れられず、その後も何度か狙っているが世の中そう甘くはなく案の定、全然釣れない。


場所:静岡県下田市田牛
大根、沖横根、下大根、裏荒神


渡船
青野川河口の手石港よりひがし丸にて¥5,000〜\6,000

仕掛け

竿 フルフィールド振出クエ、HZシーラインクエ、がまクエインパルス70号
リール PENN 6/0
ピトン 2点掛けもしくは SHOUEI 海覇
道糸 ナイロン60号
瀬ズレ&ハリス 7本撚りもしくは19本撚りステンレスワイヤー30番
ナツメ型中通し60号
がまかつクエ針45号
仕掛例 竿側から、道糸(60号)→サルカン(M)→ワイヤー(30番2m)→中通し錘(60号)→パール玉→蛍光ゴムチューブ15cm→ビーズ(黒)→クエ針(45号) ※首振り結び


付け餌さ:冷凍サバ、撒き餌:冷凍イワシ

2009年9月26日釣後記