南伊豆下田市田牛荒神の石鯛釣り
たなぼたの自己記録
2002年の3月はやけに暖かい日が続いていた。完全冬眠中の私に釣友から荒神へ釣りの誘いの電話が入った。釣友は上物をやるつもりらしかったが、私には全くその気は無かったので「雰囲気でも味わえればいいや」という軽い気持ちで石鯛竿を持って行った。途中、真鶴のあおき釣具に寄って、オフシーズンだったが何か石鯛釣り用の餌がないか訪ねてみるとオニヤドカリが19個あったのでそれらを全部買い占めた。
荒神に着いて みると海は大荒れでうねりが来る度に磯のかなり上まで這い上がってくる。先端は無理で割れ目よりも上のポイントにピトンを打つしかなかった。釣友は石鯛竿も
持っていたが、今日はメジナが本命だと言って上物釣りを始めた。
何度か打ち返しをして餌取りの状況を見てみると、うねりのせいで付け餌がぼろぼろになって返ってくるが、かじられている様子はない。暖かいと言っても3月である。海の中は真冬のはずなので餌取りが全くない。2本竿を出していたが、左の竿はハエ根を避けるためかなり左に投げてあり、正面から吹いてくる風と波で磯際に道糸が寄ってしまい竿先は常にバタバタしていた。
AM7:00頃、そろそろ餌を換えようと竿をあおると、根掛かりしているようで動かない。さらに強くあおると「ズルズルッ」といった感じで何か重いものが引っかかっている感じで動いた。「チェッ!カジメを引っかけたか!」と思いながら強引にリールを巻いていると沖の方に強く引っ張られた。「うねっているときゴミを引っ掛けると波で持っていかれるからキツイな」と思いながら竿を立てて強引に巻き取っていると今度は「クンックンッ」とあきらかに「魚の引き」が感じられた。
ここで初めて魚が掛かっていることに気づき、後方にいる釣友に知らせた。釣友は私の呼びかけに気づいているようではあったがあまり興味なさそうに眺めていた。後で聞いてみるとカンダイでも掛けたと思っていたらしい。手前20m程に寄せたところで魚が一瞬浮いた。そのシマシマ模様の魚体は紛れもなく石鯛ではないか。「石鯛だ!」と釣友に知らせるとあわてて駆け寄ってきた。
2kgクラスかと思っていた(2kgクラスまでしか釣り慣れていなかったのでいつものサイズだと思ってしまった)が足元まで引き寄せて来ると強い締め込みが何度も襲ってきてそのたびに竿を伸されて綱引きのような状態にさせられた。水面まで浮かしてはまた潜られて竿をのされるという繰り返しであった。「???引きの強い石鯛だな?」と思いながら、それでも運良くバレることなく何とかやり過ごして魚が水面まで浮いてきた。
うねりがひどかったので思い切って抜き上げようと試みる(この時点でまだ2kgクラスだと思っている)のだが頭が持ち上がるだけで水面から浮かすことができない。「???何故こんなに重いんだ?おかしいな?」と感じながら、水 面まで浮かしてはまた潜られて竿をのされるという状態を繰り返した。
次々と襲ってくるうねりを警戒しながら早く魚を磯に上げたい一心でパニック状態になっていたのが釣友にもうつったのか、釣友が私の竿尻を掴んで一緒に引っ張ろうとするといったこっけいな出来事も起こった。「自分は大丈夫だから」と告げてしかし、悪戦苦闘を続けていると、釣友が少し階段状になっている磯際を示して、「ここからうねりに乗せて引き上げろ」と指示をした。一回目の波に乗せて磯の一段目に引き上げ、そして次のうねりでさらに上の段に引き上げたところで釣友が瀬ズレを掴んで魚を磯の安全なところまで引き上げてくれた。
水面に浮いているのを見たときは2kgクラスだと思っていたが磯に横たわった魚体を見るとかなりでかい。4kgは楽に越えているだろうと思われた。手尺で長さを測ってみると65cmほどありそうだった。普段、検量用のメジャーや秤を持っているのだがこんな時期に釣れることはないだろうと思って持ってきていなかった。
魚を磯の割れ目の水ッ溜りに繋いで、その後2匹目を狙って打ち返したが餌取りもなくさっぱりであった。釣友も上物釣りにオキアミを使っていたが全然食われない始末であった。魚の気配が全くなかったので早々に撤収した。
帰る途中、小田原マリンターミナルで検量してもらったところ、全磯連測定法(尻尾を上下に広げて全長が一番短くなる計り方)にて全長61.9cm、重量4.82kgであった。
翌日、 横須賀のえびす屋さんで魚拓を取ってもらったが、そこでは63.5cmとなった。釣り上げた直後は65cmくらいありそうだったのだが死後硬直と冷蔵で縮んでしまったのだろうか。少しがっかりであったが自己記録更新でうれしかった。