城ヶ島の石鯛釣り
神奈川県三浦半島にある城ヶ島の石鯛釣りはマスコミへの露出も少なく地元の人や一部の常連釣り師以外にはほとんど知られていない釣りである。
城ヶ島の位置する三浦半島は伊豆半島と房総半島に挟まれており、両半島とも太平洋に突き出して黒潮の影響をもろに受け、5kg、6kgはては7kgというデカバンも釣れるし、7、8匹と大釣りすることもあるため関東の石鯛師には人気が高い。
それに比べ東京湾と相模湾を分けるような形で存在している小さな半島でしかない三浦半島はかなり奥まった所に位置し、黒潮の支流が稀に蛇行して当たる程度であり、遠浅でもあるため石鯛釣り場としてはあまり魅力的とは言えない。しかし、数、型を選ばなければ石鯛は狙えるのである。
城ヶ島で釣れる年間の石鯛の数は、私が耳にするだけでも50枚前後あることを考えれば、実際にはその倍の100枚程度は釣れているものと思われる。おそらく絶好調の年などは200枚近く釣れているのではないだろうか。
さすがに型に関しては、レギュラークラスが1、2kg台であり、まれに3kgクラス、おおまれに4kgクラス、最大でも数年に一度5kgクラスが記録されるかどうかといった程度であるため、両半島にはとうてい及ばない。しかし、大きいのがいないわけではないと思う。聞き伝ての話ではあるが、城ヶ島でも8kgクラスの石鯛が漁師の網に入ったことがあるし、剣崎では11kgの石鯛が網に入ったことがあるらしい。
三浦半島の大型石鯛の釣果記録を集めてみると、私が知っている限り、諸磯の沖磯で釣れた69cm、6.1kgが最大と聞いている。城ヶ島ではオネガマの67cm、4.6kgを筆頭に2015年の潮見の66cm、6.0kg、2002年の安房崎の64cm、5.6kgも上がっている。2006年には60cm、5.15kgと61cm、6kgの超オデブの石鯛が上がった実績がある。
このように夢のようなサイズに出くわす可能性も秘めたフィールドである。外道の記録では過去に釜島で18kg、居島で14kgのカンダイが上がっており、オネガマと東の間の磯で80cm台、6kgクラスの真鯛も上がったことがある。
城ヶ島での石鯛釣りの釣法に関しては大きく分けて2種類ある。1つは三浦半島が発祥の地とされているカラス貝釣方である。これは磯竿の4号、5号等を使って竿先を感度のよいソリッド穂先などに改造して足元、あるいは軽く投げて石鯛を狙う釣りであり、クロダイのヘチ釣りや前打ち釣りの石鯛版といった感じである。
この釣りはコマセを頻繁に行い魚を寄せて釣る。コマセも付け餌もカラス貝なのでカラス貝が大量に入手できなければ成立しない釣りである。仕掛けは8号のナイロン糸を道糸もハリスも通しで付け錘は中通しの6号程度、針も磯針などの小さめ。リールはクロダイのヘチ釣りで使う太鼓リールやABUの6500がよく使われている。
仕掛けが細めなため、取り込みは基本的にタモ網を用いる。小型狙いの釣りだと思われがちだが4kgクラス、5kgクラスの実績もありブッコミ釣りと釣れる型は変わらないし、コマセで寄せて釣るのでブッコミ釣りよりも効率よく釣れる。
細かな石鯛の当たりを察知して針掛かりさせる釣り味、細仕掛けで糸を巻いたり出したりして竿のタメで魚の引きをいなして取り込む釣り味を楽しむにはこの釣りがおすすめだが餌の確保が第一優先の釣りである。
もう一方の釣りは関東で一般的に行われている遠投置き竿釣法である。城ヶ島は磯際が3m、4mと浅いポイントが多いため、釣果を伸ばそうとすれば潮通しのよい沖目を広く探れる遠投技術が要求される。城ヶ島に通う石鯛師の多くがこの釣りを行っている。魚が釣れる確率が高いとは決していえないのだが、仕掛けを70m、80m投げては巻くスポーツ性や魚が掛かったときに竿が大きくしなって曲がる醍醐味があるので管理人もこの釣りを行っている。
石鯛釣りはテクニックうんぬんよりも体力と気力がものをいう釣りだとよく言われる。事実、運不運があるにしても、通い続けて誰よりも多く仕掛けを入れ続けている人は釣果を伸ばしているのである。かくいう管理人も石鯛釣りを始めて3年間は年間40,50回通って1枚釣るのがやっとであった。しかしその後は不思議と毎年5、6枚は釣ることができるようになった。
石鯛に限らずどの釣りでもせっかくお金や時間をかけて一級ポイントに行っても天候や潮の状態によっては全然釣れないこともある。それよりも安く通える近場を選んで繰り返し釣行を重ねる方が釣果を伸ばせると思う。その方が一級磯に入るよりも早くデカバンに遭遇することができるかもしれない。