2022年7月4日、釣り場に行ってみると手前でルアーマンが竿を振っていたが先端が空いていたのでそこで竿を出すことにした。

 やや波っ気があったので先端に一本ピトンを打ち、一歩手前の磯にもう一本のピトンを打った。

 手前の磯で出している竿に時々「ツンツン」という餌取りのような当たりが続いている。時々触っては数分間何も気配がないを繰り返している。

 それを続けているうちに、30分ほど経ったのでもう餌がなくなっているだろうと思い餌を付け替えようかと思っていると、また竿先がもぞもぞと動き出した。

 見ていると少しお辞儀したので「おっ!これは入りそうだぞ!」と見ていると突っ込んでいった。

 慌てて竿に駆け寄り竿をつかんだときには竿は戻ってしまい生命反応はなくなっていた。

 なんだったんだろうあれだけ竿が入ってスッポヌケか?

 もうチャンスはないかもとがっかりしながら何度か打ち返すのだが、その度に当たりもなく餌を取られてしまう。

 もしかして小型のイシガキが餌を取っているのかと思い、それならば正体を見極めてやろうと手持ちの針で一番小さい石鯛タマミ14号に餌取りに強いようにサザエの赤身のみをつけて南西風に乗っけて思いっきり遠投した。

 しばらく見ていると竿先がもぞもぞとしだした。「あやしいぞ!」と思いながら見ていると、竿先がお辞儀したかと思うまもなく竿が大きく曲がった。
 
 慌てて竿に駆け寄ると竿はさらに曲がって海面に突っ込んでいくように一直線になった。

 「でかそうだ!」と思い、竿を掴んで大きくあおるとなかなかの重量感。

 リールを巻き始めるがすぐに違和感を覚えた。重量感はあるが引きが全く感じられなかった。

 「やっちゃった!」脳裏にカンダイの姿が浮かんだ。

 遠投していたので寄せてくるまで暫らくリールを巻いていたのだが、その間一度も引きや突込みなどなく、むしろ時々「スーっ」と軽くなる時さえある。

 絶対に石鯛じゃない。という確信が芽生え、ぬか喜び後がっかりしながらリールを巻いていると、海面近くに赤茶色の魚影が見えた。

 「ああやっぱりカンダイだ!」と思いながら水面まで浮かせると、カサゴのような魚がおおきな口をガバーっと開けて上がってくるような光景が見えた。

 「カサゴ?いや待てこんなにでかいカサゴはいないぞ!オニカサゴ?こんなに浅瀬にいるわけない。ハタ?模様が違う。模様はアカハタに似ているな?でもこんなにでかいのがいるはずない。」

 分けがわからず半ばパニックになりながら、頭の中にある情報と照らし合わせてみると、「待てよあの色と模様はまさかクエか?」。城ヶ島で釣れると思ってもいない魚が掛かってきたのでこの事実を証拠として残すためにも絶対に逃がすものかと丁寧に引き上げた。

 磯に上げてまじまじ見てみると明らかにクエである。なんでこんなところにいたのだろうという不思議な気持ちと針があご下にスレで掛かっていたので本当にサザエに食ってきたのだろうかという疑問と幻の魚を釣り上げた快挙の嬉しさで良く分からない気持ちだった。

60cm、2.4kg